歩きながら考えると、なぜ答えが出るのか — スタンフォード大学の研究と、コーチング現場の実感
- 桜井夏輝
- 8月25日
- 読了時間: 5分
更新日:8月29日
「会議室で2時間悩んでも出なかった答えが、帰り道の10分で出た」。こんな経験はないでしょうか。
私は企業研修の講師として年間200回以上登壇しながら、個人向けには「歩きながら話す」コーチングを提供しています。この仕事を続けるほど確信が深まるのが、人は座っているときと歩いているときで、出てくる言葉の種類が変わるということです。この記事では、その理由を研究と現場の両面から整理します。
この記事でわかること
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歩くと「発散的思考」が広がる — スタンフォード大学の研究
スタンフォード大学のオッペゾとシュワルツが2014年に発表した研究では、歩いているとき(および歩いた直後)は、座っているときに比べて創造的なアイデアの産出量が平均で約60%増えました。実験参加者の大半で向上が確認されています。
興味深いのは、屋外の散歩だけでなく、壁に向かって屋内でトレッドミルを歩いた場合でも効果があったことです。つまり、景色の良さ以前に「歩く」という行為そのものが、発想を広げるスイッチになっているのです。

なぜ歩くと考えが進むのか — 現場で感じる3つの理由
研究が裏付けているのは「歩行と発散的思考の関係」ですが、コーチングの現場ではもう少し手触りのある理由を感じます。ここからは私の実感としてお読みください。
視線の圧から自由になる。 歩いているとき、人は隣の相手ではなく前を見ています。目を合わせずに話せる対話は、驚くほど本音が出やすいものです(この話はおさんぽ学のススメ〜視線編〜でも書いています)
リズムが思考の詰まりをほぐす。 足のリズムが一定になると、止まっていた言葉が動き出します。行き詰まったときに貧乏ゆすりをしたくなるのは、たぶん偶然ではありません
「今すぐ答えを出さなくていい」余白がある。 会議室の沈黙は気まずいものですが、散歩の途中で黙るのは自然なことです。沈黙が許される場でだけ、熟成が必要な考えは言葉になります
ただし「決める」ことには向かない
先ほどの研究には続きがあります。歩行が押し上げるのはアイデアを広げる発散的思考であって、ひとつの正解に絞り込む収束的な作業では、歩行が有利とは言えませんでした。
この点は、2026年に発表された分析でも確かめられています。23の研究・計1,036名分をまとめたところ、アイデアを広げる思考への効果は大きい一方、絞り込む思考への効果は確認できませんでした。あわせてこの分析は、歩行の効果を支持する結果の多くが上の2014年の研究チームに由来しており、独立した追試が必要だとも指摘しています。「約60%増」は有望な知見ですが、確定した事実ではないというのが、いま言える正確なところです。
出典: 歩行と創造的思考のメタ分析(PLOS ONE・2026年5月・英語)。この検証をふまえた設計の話は、続きの記事で書きます。
だから使い分けが大事です。選択肢を広げたいとき、モヤモヤを言葉にしたいときは歩きながら。予算を決める、契約書を読むなど、絞り込みと精密さが要る作業は座って。私のコーチングでも、歩きながら広げた内容を、最後に立ち止まって整理する流れをよく使います。

一人でもできる「散歩会議」のやり方
コーチがいなくても、今日から試せる形をひとつ紹介します。
問いをひとつだけ決めて、15分歩いてください。 「来期、何をやめるか」「あの違和感の正体は何か」。問いは出発前にスマホのメモに書いておきます。歩きながら浮かんだことは、立ち止まって音声入力で吐き出す。帰ってからメモを見返すと、机の前では出なかった言葉が案外残っています。
コツは、問いを増やさないことです。ひとつの問いを連れて歩く。それだけで散歩は会議室になります。
まとめ
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おさんぽコーチングは、この「歩くと言葉が変わる」現象を1対1のコーチングに組み込んだサービスです。オンラインおさんぽなら、イヤホンで通話しながらあなたの好きな道を歩いてもいいし、画面越しに座ったままでも受けられます。座って考えて行き詰まっているテーマこそ、一度歩きながら話してみてください。
追伸:偉そうに「歩くと発想が広がる」と書きましたが、私自身も机の前で唸っている時間のほうが圧倒的に長いです(笑)。だからこそ、歩き出した瞬間に言葉が出てくるあの感じのありがたさが、よく分かります。
この記事を書いた人: 桜井夏輝(おさんぽコーチング創案者)。企業や教育機関向けの研修に年間200回以上登壇しながら、歩きながら話す1対1のコーチングを提供しています。プロフィールはこちら



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