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ChatGPTに壁打ちしても答えが出ないのはなぜか — AIが得意なことと、人にしかできないこと

9月22日
読了時間: 5分

経営やキャリアの悩みをChatGPTに投げてみた。整理された、的確そうな答えがすぐ返ってくる。なのに、なぜか前に進んでいない——。そんな経験はないでしょうか。


先に書いておくと、私はAIを毎日使っていますし、AIへの壁打ちはかなり有効だと思っています。そのうえで、AIの壁打ちがどこまで効いて、どこから効かないのか。研修とコーチングの現場で感じていることを整理します。

この記事でわかること

  • AIへの壁打ちが得意なこと(ここは素直に優秀です)

  • それでも「答えが出ない」と感じる理由

  • AIと人のコーチの使い分け方



そもそも「壁打ち」とは — AIは史上最高の壁かもしれない

ビジネス用語の「壁打ち」は、テニスや卓球で壁に向かってボールを打つ練習に由来します。考えを口に出して相手に打ち返してもらい、ひとりでは進まなかった思考を整理する行為です。


参考: Forbes JAPAN「壁打ちとは」(2025年4月)。語源と使われ方が整理されています。

壁の良さは、何度打っても文句を言わず、正確に返してくれることです。その意味でAIは、史上最高に打ちやすい壁だと思います。深夜でも付き合ってくれて、疲れず、話を遮らない。まずこの価値は、素直に認めるところから始めたいのです。



AIの壁打ちが得意なこと

私自身がAIをよく使うのは、こんな場面です。

  • 選択肢の洗い出し。 自分では3つしか思いつかない打ち手を、10個に広げてもらう

  • 情報と論点の整理。 散らかった考えを箇条書きや表にしてもらう

  • たたき台づくり。 ゼロから書くより、直すほうが速い

  • 反論を頼む。 「この計画の穴を指摘して」と頼めば、遠慮なく挙げてくれる

ここで済む悩みは、AIで済ませていいと本気で思っています。材料を広げ、整理する作業において、AIはすでに多くの人間より速くて安い。 ここを認めないと、この後の話は信用してもらえないはずです。


材料を広げて整理する作業なら、AIはすでに速くて安い


それでも答えが出ないのは、問いを立てているのが自分だから

では、なぜ物足りなさが残るのか。AIは、投げられた問いには驚くほどよく答えます。ところが研修やコーチングの現場で経営者・リーダーの話を聞いていると、本当に困っているとき、人は「自分がどの問いを立てるべきか」が分かっていないことがほとんどなのです。


「売上を伸ばすには?」と聞けば、施策のリストが返ってきます。でも本当の論点が「そもそもこの事業を、自分は続けたいのか」だったら、その施策リストは、ズレた問いへの精密な答えです。AIとの壁打ちは、自分が立てた問いの精度が上限になります。答えが出ないと感じるときの多くは、答えではなく問いのほうがズレています。



人のコーチが打ち返しているのは、ボールではない

コーチの仕事は、聞かれたことに答えることではなく、聞かれていないことを聞くことです。話の途中の言い淀み、同じ言葉の繰り返し、急に早口になる瞬間。本当の論点はそういうところに埋まっていて、「いま、言い方を変えましたね」という一言から核心に入っていくことがよくあります。投げたボールではなく、投げ方を見ているわけです。


もうひとつは、耳の痛いことを言ってもらえるかどうかです。AIは基本的にこちらの前提に乗って答えてくれます(それが使いやすさでもあります)。前提そのものに対して「それは撤退ではなく、逃げに聞こえます」と言ってくれる相手は、意識して確保しないと手に入りません。


コーチが見ているのは、投げたボールではなく投げ方


「続ける」と「決める」には、人が要る

いつでも話せる相手とは、いつまでも話さないでいられる相手でもあります。AIはこちらが開かない限り待っていません。カレンダーに人との約束が入っているから、考えることが先延ばしにならない。継続的に考え続けるための強制力は、いまのところ人のほうが強いと感じます。


そして壁打ちの終点は、判断です。判断の責任は誰にも代わってもらえませんが、人に向かって「決めました」と口に出すことは、覚悟を固める行為になります。同じ言葉をAIの入力欄に打っても、見届ける人がいません。



使い分けの実際

まとめると、使い分けはシンプルです。

  • 材料集め・整理・たたき台 → AI。 遠慮なく使い倒す

  • 問いがぼやけている・決めきれない・続かない → 人。 ここはお金を払う価値がある部分です

  • 併用が一番強い。 AIで論点を整理してから人との60分に持ち込むと、対話の密度が上がります

人と話すなら、歩きながらの対話がおすすめです。歩くことと発想の関係は「歩きながら考えると、なぜ答えが出るのか」に書きました。



まとめ

  • AIは史上最高に打ちやすい壁。選択肢の洗い出し・整理・たたき台は任せていい

  • ただしAIの壁打ちは、自分が立てた問いの精度が上限になる

  • 人のコーチは、聞かれていないことを聞き、耳の痛いことを言い、決める場に立ち会う

  • 材料はAI、問いと覚悟は人。併用が一番強い


おさんぽコーチングは、画面越しでも、歩きながらでも受けられる1対1の対話です。AIに壁打ちしても堂々巡りしているテーマがあれば、一度人間の壁も試してみてください。


追伸:私ほど日常的にAIに壁打ちしている人間も、そうおらんと思います。使い込んでいるからこそ、人と話す60分に何を持ち込むべきかが、はっきり見えてきました。



この記事を書いた人: 桜井夏輝(おさんぽコーチング創案者)。企業や教育機関向けの研修に年間200回以上登壇しながら、歩きながら話す1対1のコーチングを提供しています。プロフィールはこちら


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